強烈なあおりに偽りなし【ルビンの壺が割れた】
「日本一の大どんでん返し(と断言したい)」
「クチコミで20万部!ただ圧倒的に面白い!」
とこれでもかと帯で散々あおっている本作「ルビンの壺が割れた」 宿野かほる著。
いくらなんでもハードル上げすぎでしょう、と思いながら読んでみた。
いやあ、たしかに面白かった。語彙が貧しくなるほど面白かった。
手紙ではなく、フェイスブックのDMのやり取りで話が進んでいく。
中年になってからパソコンを触り始めた男性が、30年ほどあっていない昔の知り合いを偶然見つけて、メッセージを送りつけたことから話が始まる。
最初は男性から一方的に送りつけて行くだけだったのが、相手の女性が返信を始めたことから話が大きく動き始める。
二人は大学の演劇部の先輩・後輩で、結婚の約束をしていたこと、そして、女性が式の当日に失踪していたことがわかる。
それだけなら「とんでもない女だ」となるのだが、女性の文面からは罪悪感のようなものは一切かんじられず、大きな違和感を抱えながら読み進めることになる。
そして、これから1通づつメッセージが送られるごとに、大きなどんでん返しの連続となる。
思い出話を語る形で、段々と二人の関係が明らかになるのだが、1回のやり取りごとにそれまでの認識がひっくり返る感覚になる。
1通1通のメッセージが、それぞれどんでん返しを売りにしたミステリードラマや映画なみの迫力を持って襲ってくるので、くらくらしてしまう。
最後までいくと、ものすごい寒気におそわれる。
読者は、最初まるで事情がわからずハラハラしながら見守っていたのだが、当事者である二人はすべて知っていた上でーもちろん当時相手に隠していたことはお互いにあるのだがー、やり取りしていたのかと思うと本当にぞっとしてしまう。
その上で、最初から読み直すとまるで印象が変わってしまう。
作者はペンネーム以外のプロフィールが一切非公開であり、そのことでさらにミステリアスさがましていると思う。
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